山口電機工業株式会社
バックアラームやイグニションパーツ、各種スイッチ類等を製造販売する山口電機工業がJAPAの準会員に加わった。もともと知名度が高い同社だが、改めて山口会長に同社についてうかがった。
◆高い開発力で世界に先駆け
クルマのバック走行時の安全に欠かせないものとなっているバックアラーム(後退警報機)。1963年に山口電機工業が世界で初めて開発し、製品化したものだ。
当時、バック走行時の事故が続き、創業者の山口松三郎氏が事故を何とか防げないかと考え、音で危険を知らせる、という発想からバックアラームを開発した。この製品はバック走行時の安全性を飛躍的に高め、今では欠かせないものとなっている。
用途に合わせて警報音の種類や出し方、聞こえ方等、様々な研究開発を続け、バックアラームは現在も同社の主力製品となっている。
スピーカータイプの「スーパーバックアラーム」は同社のフラッグシップモデル。また「bbsホワイトサウンドアラーム」は、BBS(ブロードバンドサウンド)音の騒音低減タイプで、耳に優しく、音の方向性を明確にできる次世代のバックアラームだ。
その他、耐衝撃性に優れ実用性を重視したヘビーデューティータイプの「ハイアラーム」、周囲の騒音レベルを検知し、適切な音を判別して自動調整する「ハークアラーム」など、実に多彩なラインナップを誇っている。
◆開発志向の技術者集団
同社は今から72年前の1946年に現会長である山口哲夫氏の父、山口松三郎氏が創業した。山口会長が1984年から2代目の社長を長らく務め、この11月からはご子息の研士氏に社長を任せて、会長に就任した。
同社の主力製品はバックアラーム、イグニションパーツ、自動車および建機用の各種スイッチ、ランプなどで、乗用車用だけではなく建設機械や特装車など幅広い車種に必要不可欠な部品を手掛ける。
現在は、東京オリンピック需要により産業車両用の部品が好調で、売上にも貢献しているそうだ。
山口会長は慶応義塾大学工学部の出身で、同社に入社する前も電機メーカーで主に測定器の設計に携わっていた。
ちなみに1964年に開催された東京オリンピックの陸上競技で使われた風速計は山口会長の設計によるものだ。
同社の特長は、高い技術力、厳しい品質管理、安定した生産体制。社長自らが技術者であるだけに、モノ作りに対してとりわけ厳しい姿勢で取り組んでいる。
モノ作りの根幹となる基礎技術を幅広く、深いレベルで理解し、その上でバックアラーム開発に見られるように「今までにないもの」を生み出し、製品化する力を持つ。建機メーカーや車両メーカーからの高度な要求に、独自の発想と技術力で対応している。
◆高品質な部品を世界に安定供給
開発生産の過程では、振動、砂塵、熱などクルマの過酷な使用環境をシミュレートし、耐久試験、熱衝撃試験、耐塵試験、振動試験など多角的な評価テストを実施する。過酷な試験をクリアした同社製品は、世界標準となるISO、SAEをはじめとして、全世界の多様で厳しい品質保証規格に対応している。
国内では秋田に生産工場を持ち、効率改善手法を日々蓄積しているという。秋田工場では世界で走っている日本車の補修部品を生産し、メイドインジャパンの安心感を提供している。その秋田工場の厳しい品質管理のノウハウを生かして、1994年には中国広東省にも工場を設立、中国での生産を開始した。
中国工場ではコストと品質の両立を目指し、高品質を維持したまま競争力のある部品生産を実現している。国内外の部品メーカーから生産委託を受け、品質保証から物流まで総合的にサポートしている。また樹脂成形金型を社内で設計、製造できる体制も整えており、自由度の高い開発、生産を支えている。
◆全社一丸で魅力ある企業へ
同社では現在100人以上の社員が活躍している。社員に対し「あまり自分の方から押し付けることはしない」と山口会長。社員一人ひとりの課題や目標に耳を傾け、社員の考えを尊重する。経営方針にも全社一丸となって魅力ある企業を造ることを掲げている。
100年に一度の大変革期と言われる自動車業界。今後のマーケットがどうなっていくのか懸念されるが、山口会長はクルマの必要性を強調する。
「クルマをとりまく基本技術は大きく変化しているが、技術や経営環境が変わっても、人の移動や作業の補助、運搬をする"クルマ"の必要性は変わることはありません」。
次世代自動車用の静音アラームの開発に新たに取り組むなど、同社は今後も高い開発力を生かした高品質製品の供給を通じて、未来のクルマ社会の安全と快適を支え続けていく。
今年80才となった山口会長。
元気と若さの秘訣は毎日飲むワインにありそうだ。ワインに含まれるポリフェノールが美容や病気予防に効くと注目される中、「ワインが体にいいことを私が証明している」と笑う。趣味は旅行と音楽鑑賞(クラシックとジャズ)。これからカメラも始めたいそうだ。
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- ・東洋エレメント工業(株)「燃料フィルタ、エアクリーナエレメント、オイルフィルタ、キャビンフィルタ」
- ・ミヤコ自動車工業(株)
- ・制研化学工業(株)「ブレーキ&クラッチパーツ、ブレーキフルード、クーラント」
- ・HKT(株)
- ・武蔵オイルシール工業(株)「オイルシール」
- ・大野ゴム工業(株)
- ・谷川油化興業(株)