「国際オートアフターマーケットEXPO2017」の初日にあたる3月15日、主催者企画「第2回自動車補修部品ビジネスフォーラム」が同展会場内で開かれた。

 JAPAの青木乙彦理事長をはじめとした関連団体の代表者が登壇したフォーラムでは、近年カーアフターマーケットで深刻となっている模倣品問題をテーマに、それぞれの団体の現状や取り組み状況、求められる対応策などについて話し合われた。

img

 アフターマーケットにおける諸問題や課題をテーマに、関連団体の代表者を招き意見交換を行う同フォーラムは、前回の「IAAE2016」で初めて実施され、今回が2回目。

 今回は模倣品問題をテーマに、日本自動車部品工業会(部工会)・知的財産権部会の酒井紀夫部会長、日本自動車用品部品アフターマーケット振興会(NAPAC)の高瀬嶺生副会長、日本自動車部品協会(JAPA)の青木乙彦理事長、リビルト工業会全国連合会の深澤広司会長の4人が登壇。各団体が直面する模倣品問題の現状と対応策などについて意見を交し合った。



ユーザーには曖昧な部品用品の定義も一因か

 近年、国内の部品・用品メーカー製品の模倣品が増加し、インターネット販売の普及等を背景に拡大している。これら模倣品の中には粗悪なものも多く、安全性の面で問題があるだけでなく、アフターマーケット全体の信頼低下にも繋がりかねないとして対応策が求められている。

 フォーラムの冒頭、国内アフターマーケットでは関連商材が補修部品、リビルド部品、用品等とカテゴリ分けされているが、消費者であるカーユーザーには明確に区別ができない。定義の曖昧さやユーザーの認識の低さも、模倣品拡大の要因のひとつではないかという問題提起が、進行役のジェイシーレゾナンス・松永博司代表取締役からなされた。

 この点について、JAPAの青木理事長も、「これまで優良部品の普及に努めてきたが、誕生から50年近く経ったことで定義が曖昧になり、純正以外の補修部品は全て優良部品といった誤解も広まっている。JAPAが推奨した部品のみが優良部品であるという認識を明確にしたい」と、正しい情報発信が現在の課題であることを明らかにした。

img

 リビルト工業会の深澤会長も、「リサイクル部品という言葉は広く認知されているが、多くの人はリユースとリビルドの区別がついていない。その結果、海外製の粗悪な新品部品がリビルド品として流通している例も見られる」と、商品に関する誤った認識が広まることへの懸念を示した。


海外市場での模倣品横行への対応策

 会員である部品メーカーの多くが模倣品の被害を受けている部工会では、専門部会を設置して対策に取り組んでいる。

 フォーラムでは、模倣品をはじめとした知的財産に関する諸問題への対応を行う部工会・知的財産権部会による様々な取り組みが、酒井部会長によって紹介された。

img

 酒井部会長によると、模倣品の多くは主に中国で製造し周辺諸国に拡散していると見られるが、粗悪な製品も多く、製造元と誤解された会員メーカーがクレームを受けるなど被害も大きい。国内の場合は対処法もあるが、海外市場での流通を食い止めるのは非常に難しいという。

 同部会が行った海外の模倣品に関する実態調査によると、中国以外で模倣品が確認されたのはUAEのほか、フィリピンなどASEAN諸国が目立つ。

 同部会では、中国で開催される国際自動車産業見本市「アウトメカニカ上海」にブース出展し、模倣品が横行している現状と危険性をアピールしている。また昨年は、中国、UAEへ赴き模倣品の摘発要請を行ったほか、相手国の警察や税関に各製品の特長等を伝えるなどして、模倣品流出の差し止めを図っている。



アフターマーケットへの正しい情報提供が鍵

 品質面で劣る模倣品だが、整備費用を低く抑えたい整備業者やユーザーの中には、模倣品と知りながら価格を優先して購入するというケースも多い。

 部工会・知的財産部会が「アウトメカニカ上海」への来場者を対象に模倣品に関するアンケート調査を行ったところ、「模倣品とわかっていても購入する」という回答が約3割にのぼり、特にブレーキパッドやブレーキシュー等の消耗品でその傾向が強い。模倣品を購入する理由は「安いから」が約6割と過半数を占めており、問題の難しさを浮き彫りにしている。

 この他国内市場においても、外装部品に関しては、自動車保険の等級見直しの影響で、簡単な修理では保険を使わず自費で安く修理しようとするカーユーザーが増え、それに伴い安い部品を求める傾向が強まっているとの報告もなされている。

 ユーザー自身が低価格の製品を求めるという点では、インターネット販売の影響も大きい。

 NAPACの高瀬副会長によると、ユーザーがネット―オークションで落札した海外製の模倣品を、整備工場へ取付け依頼する事例が増えているが、「ユーザーが模倣品を持ち込んでも、整備現場では指摘できないのが現状」だという。

 また、スポーツパーツ等の場合、その商品・ブランドのファンが自分のために海外から低価格の模倣品を購入していたのが、次第にサイドビジネス化するケースも見られるといい、「ネットの普及により、個人でそういった取引が可能になったことも(模倣品増加の)一因ではないか」と指摘した。

 こうした模倣品の広がりの背景には、商品の品質や製品保証等の安全性に関わる重要な情報がユーザーや整備業者に正しく伝わっていないこともあるとみられる。

 登壇者の間では、模倣品の拡大を食い止めるには、商品に関する正しい情報を消費者や整備業者に提供することが重要という意見が相次ぎ、今後はメーカーや販売店側が扱い商品についてどれほど正しい情報を持つかが問われるようになるとの認識を改めて確認し合った。



一般社団法人日本自動車部品協会 JAPA